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2007-04-13

Speak English (309)

15年位前に米国のフロリダ州の友人を訪問したことがあった。地方訛の話になり、その人は、自分がロサンジェルスに行った時、南部訛で話が通じず、Speak English! といわれたことがあると、笑って話してくれた。Speak English! を、きつく取れば「あなたのは英語じゃない」ということになるが、笑顔でいえば「分りません。ご免なさい」という程度になる。
もっとも、僕には、その人や地元の人の英語が特に訛がひどくて、分らないとは思わなかった。
Raymond Chandler, The Big Sleep に次の場面がある。私立探偵のフィリップ・マーロウが、事件の依頼を受けて、富豪の邸宅に招かれる。
自己紹介をしてくれといわれて、マーロウは次のようにいう。

“Sure, but there’s very little to tell. I’m thirty-three years old, I went to college once and can still speak English if there’s any demand for it.
「いいですよ。でも余りいうことはないんです。33歳です。一応、大学は出ておりまして、今でも必要があれば、まともな英語を話すこともできます」

アメリカ人だから今でも英語を話してはいるのだが、ここでは、
I speak good English.
の意味。しかし、何しろ、警察や悪人と付き合う商売なので、大分言葉遣いは悪くなった。でも、きれいな英語を話す必要がある場合、つまり、相手次第で、ちゃんとした英語を話して好印象を持ってもらうことが必要だと思えば、いつでもその用意はあります、といっている。
マーロウは、Farewell, My Lovely でも、電話で事件の依頼をしてきた相手が、「事件の性質についてはとやかくいわないだろうね」と訊いたので次のやりとりをする。

“Not as long as it’s legitimate.”
“I should not have called you, if it were not.”
A Harvard boy. Nice use of the subjunctive mood.
「合法的なことであればね」
「そうでなければ、電話をしていないよ」(当然、合法的なことだ)
ハーバード出だ。仮定法を正しく使う。

電話の相手の言葉 “I should not have called you.” は、仮定法過去完了。過去の事実に反する仮定であるから、これで正しい。今、電話で話しているのだが、call (電話を掛ける)という行為はすでに過去のことになっている。
“if it were not (legitimate).” は、仮定法過去で現在の事実に反する仮定。合法的であるかどうかは、電話で話している今でも変わりがないからである。
そして、マーロウは(ということは作者は)このように仮定法を正しく使うのは、ハーバード大学出身だからと推測している。

The Big Sleep に戻って、マーロウの自己紹介を聞いた依頼主は

“And (you are) a little bit of a cynic.”
「君はちょっとひねくれとるな」

と評する。cynic の形容詞 cynical は sarcastic の意味。「冷笑的」と訳される。卑下とは違って、本当は自信がある。それを素直にいわないで、「商売が商売だから、まともな言葉は話していないが、必要があれば使える」などと屈折した云い方をする人が cynic である。

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